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トランプ大統領当選の舞台裏 [トランプ大統領]

「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和元年(2019)12月20日(金曜日)弐
          通巻6314号  
から引用:

スティーブン・ムーア、アーサー・B・ラッファー著、藤井幹久訳
  『トランポノミクス アメリカ復活の戦いは続く』(幸福の科学出版)
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 四年前(2015年)の六月、不動産王のドナルド・トランプがNYのトランプタワーに内外記者を集めて立候補宣言をしたとき、メディアの殆どがピエロ、泡沫候補として扱かった。
ただし、当時、立候補を噂された共和党十六人の候補者のなかでトランプはTVでも顔を売っていたからダントツに有名人だった。
 その記者会見でトランプは一冊の自著を配布した。「障害を背負ったアメリカ」という著作には、以後にトランプが打ち上げる政策のすべてが網羅されていた。ところが真面目に通読したジャーナリストはいなかったらしく、内容は話題にもならなかった。
日本でも当該書を取り上げたのは、じつは評者(宮崎)だけだったような記憶がある。
 2016年があけて予備選の幕が切られようとしていたとき、本命視されていたのは保守本流のブッシュ(弟)とマルコ・ルビオ(フロリダ州、上院議員)、茶会系からはテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)、ウォール街が期待したのはケーシック知事だった。前回に負けたミット・ロムニーの名前も欄外にあったが、誰一人トランプに眼をやるジャーナリストはいなかった。
 すなわち米国の政治環境はエスタブリシュメントを基盤に、グローバリズムに酔っていた。
アウトサイダーのトランプをまともな候補とは見ていなかったのだ。

 著書のラッファーらは振り返る。
 「選挙運動のコンサルタント業者を通じて、政治評論家、選挙スタッフ、世論調査会社、広告会社などに大金を払うというやり方を、(トランプは)完全に覆してしまった」
だから「共和党の職業政治家たちは、トランプを嫌っていた。そして、現在でも嫌っているのだ」。
共和党選挙関係者は、「自分たちの存在を脅かす危険な前例とならないように、徹底的にトランプを叩きつぶそうとして」(40p)
 トランプは選挙プロに頼らないで素朴な人々、底辺の人々に訴える。トランプは草深い牧場、農場、そして教会を重要視した。
 奥深き雪国の奥地に、その村始まって以来の大集会が開催されていた。このアメリカの田舎の集会に注目したのは週刊誌『TIME』だった。人口二万足らずの村に一万近い村人が雪を構わずに集まりだした。雪と寒さに耐えながら、じっとトランプの到着を待っていたのだ。村、始まって以来の動員は自然発生だった。トランプ旋風のうねり、奇跡の驀進劇が始まろうとしていた。
 以後、中西部のエバンジュリカルの集会は、二万、三万の人が集まりだした。トランプが来るというので、奥地の町や村が騒ぎ出した。
 予備選がスタートするや選挙プロ達の想定になかったことが起きた。意外、トランプがトップに躍り出た。
 「まさか、こんな莫迦なことがおこるなんて」。
 保守本流はブッシュ擁立を諦め、ルビオ議員に集中して支援した。ネオコンはクルーズだった。ウォール街はケーシック知事だった。
 予備選で次々とトランプがリードをはじめると、初めて共和党が焦り、ネオコンや保守本流、ウォールストリートが、本命候補をそっちのけでトランプ批判を始めた。
共和党あげて、トランプ選挙に冷淡だった。党は、とうとう最後までトランプに冷たく、予備選に勝利しても、選挙協力をするどころか、トランプを落選させよう、ヒラリーに投票しようという呼びかけが、それもブッシュ政権の幹部だった人々が五十名の連名で声明をだした。つまり共和党もいつしか、ディープステーツに乗っ取られていたのだ。民主党と通底しているからである。
 共和党の分裂と大混乱の事態を喜んでいたのはヒラリー陣営だった。共和党が分裂し、悲惨な結末になるだろう、多くのジャーナリストらは、もちろん、ヒラリーが当確と予測していた。
 評者は現地へ飛んで選挙集会より街の表情と庶民レベルの反応を探った。例えばNY42丁目に有名なお土産屋がある。トランプ人形は飛ぶような売れ行きに対して、ヒラリーを土産にする人がいない。書店にはいると、トランプの著作はベストセラーだった。ヒラリー本は片隅にあるが、だれも買わないではないか。

 さて本書である。
 予備選直前からトランプ選対に集合し、経済政策のアドバイスをしていた三人の男たちがいた。自弁で飛行機大を支払い、手弁当でNYのトランプタワーに集合し、予備選から本番にかけての経済政策の公約を煮詰めていた。トランプと何回も会合を重ね、大型減税や、規制緩和、失業対策、オバマケアの廃止など、アメリカが復活に向かうシナリオが用意された。
 それが本書の著者、スティーブン・ムーアとアーサー・B・ラッファー。もうひとりがラリー・クドローだった。クドローは経済番組をもつ有名人で、トランプによって国家経済会議の委員長となったため、本書執筆に連名から降りた。
 ムーアはヘイティジ財団のフェロー、元ウォールストリートジャーナルにいた。
 ラッファーはレーガン政権のブレーンとして活躍し、税率と歳入のグラフを描いたラッファーカーブで知られる経済学者である。
 かれらがトランプとの懇談を重ねながらも選対本部の実態をつぶさに見てきた。あまりに少ないスタッフ、素人の選挙軍団。ヒラリー陣営の二十分の一しか戦力がないのだ。テレビCMをうつ予算もなければ、大口の寄付は限られていた。目に見える劣勢にあった。
 本書の魅力のひとつは、このインサイドストーリーである。
 とくにカメレオンのように論調を変化させながらも、トランプに極度に冷たかったのが投資家やエコノミストが愛読するウォールストリートジャーナルだったことに、私たちは印象深い感想を抱くだろう。著者らはそのことを指摘する。

 選対では「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」などの力強くパンチの効いた標語などが決められていく。
 メディアは本番がはじまっても、ヒラリー優勢の報道に凝り固まっていて、例外はフォックニュースだけだった。
 ところが、この劣勢状況をトランプはSNSのツィッターを利用してメッセージを連続発信したため、トランプのメッセージがTVニュースや新聞種になった。トランプの集会は立錐の余地がない。一方でヒラリー集会は観客で会場が埋まらず、テレビは小細工して、全景を撮影せずにヒラリーだけをアップに、トランプ集会も熱気に満ちた会場風景を意図的に撮影せずに、トランプの失言だけを報じる情報操作、印象操作に明け暮れた。
 予備選たけなわの頃、評者もアメリカへ行って、日本の報道実態とリアルとの、あまりの格差に唖然となって、すぐに『トランプ熱狂、アメリカの反知性主義』(海竜社)を緊急に上梓した。
 当選後は、景気が回復するだろうとして『トランプノミクス』(同)を書いた。本書は「プ」を「ポ」と一字違いだ。トランプはゲームのカードだが、アメリカの語感には『切り札』という意味がある。当時のトランプ陣営のインサイドストーリーは、じつに面白い。

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